ボルゲリから古代のブドウ品種を送り出し、未来に残す生産者
1960年代、現オーナー・アレッサンドロ・スカッピーニの母方の祖父であるルイジ・コッラディーニは、カスタニェート・カルドゥッチの丘陵地に18ヘクタールの土地を見つけました。その場所こそボルゲリでしたが、当時まだ無名で、評価される要素といえば「大地の力」と「偉大なワインを生む可能性」だけでした。
祖父のルイジが最初に植えたのは、キャンティやスカンサーノ由来の土着品種のみ。サンジョヴェーゼ、プニテッロ、フォリア・トンダといったブドウをわずかな区画に栽培し、小さなセラーでワイン造りを始めました。やがて、土地の管理は彼の息子ロベルトへと引き継がれていきます。
そして2009年、三代目としてアレッサンドロ・スカッピーニがワイナリー「ポデーレ・イル・カステッラッチョ」を正式に設立します。
若い頃に農業学校で学んだものの、アレッサンドロはその後プロの馬術家(として活躍し、商業の世界にも身を置いていました。しかし、ビジネスの単調な日々に物足りなさを感じ始め、やがて「ワインつくり」への情熱が再燃します。
当時、ボルゲリは世界でも名を馳せるワイン産地へと成長していました。そんな中で彼は、祖父が残した土着品種に再び光を当て、独自のスタイルでワイン造りを進めていく決意を固めます。
2010年、初めて1,500本のワインを瓶詰めし、結果は好評。翌2011年には100%サンジョヴェーゼの「ディノストロ」が正式に誕生しました。これは、ポデーレ・イル・カステッラッチョの出発を象徴する1本となりました。
アレッサンドロは続いて、サンジョヴェーゼ、プニテッロ、フォリア・トンダのブレンドによる「ヴァレンテ」を発表。土着品種の可能性を最大限に引き出す挑戦を続けました。
2014年、ワイナリーはついにボルゲリDOCワインの制作に乗り出します。しかし、そこにもアレッサンドロ独自のアプローチがありました。
段々畑の急斜面に約1ヘクタールのカベルネ・フランを植え、珍しい「株仕立て(ブッシュ・トレーニング)」で栽培を開始。さらに、耕作には馬を用いることで、植物を傷つけず、土地の生命力を蘇らせるという伝統的かつサステナブルな方法を導入しました。
この取り組みを彼は「英雄的ワイン造り(Heroic Viticulture)」と呼んでいます。
この畑から、2018年に収穫されたブドウで造られたのが、2021年リリースの「イル・カステッラッチョ・ボルゲリ・ロッソ・スペリオーレ」です。
2015年には、カベルネ・フラン、メルロー、シラーを植えるため、ボルゲリ通り沿いに2ヘクタールの畑を追加購入。ここから造られたのが、「オリオ・ボルゲリDOC」です。
2020年には、妻エンリカの尽力により、9つのアパートメントと1室のゲストルームからなる宿泊施設が完成。海と丘の間に位置し、すべてバイオ建築の理念に基づいた設計となっています。
また、同年には100%プニテッロを使った「ソマティコ」をリリース。古代品種の保存と普及を目的とした取り組みが本格化します。
このプロジェクトの一環として、さらに1ヘクタールの土着品種の植樹も行われました。
アレッサンドロは早くから環境配慮を重視しており、2015年にはオーガニック認証を申請。2017年には祖父が建てた古いセラーの改修に着手し、空間を再設計するとともに、最新技術の導入も進めています。

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