コルシカを代表するワインの産地、アジャクシオのコロ村にあるドメーヌ・マルティニ。18世紀半ばまではイタリア領であったコルシカですが、カトリック教会の枢機卿にあたる家柄であったマルティニ家が17世紀にコルシカに入植し、ワイナリーを創業。それ以来、現在までオーナーとしてワイナリーを代々受け継いできました。畑の立地が海に近く、海風のおかげで葡萄の病害の発生が少ないという利点もあることから、昔から続く伝統的な農法を守っており、農薬・化学肥料・除草剤の使用を避けるオーガニックの手法をとっています。
ワインのエチケットには、マルティニ家とルドゥンテュ家の両家の名が記されていますが、当主はマダム・マルティニであり、エチケットにあるルドゥンテュ家はマダムのご主人であるアンドレ氏の姓です。瓶詰めは先代であるマダムの母の代に始められました。また、醸造は、当初アンドレ氏主導で行われていましたが、2002年にジル氏が加わり、現在では娘のブリジット氏や孫も手伝うようになりました。ジル氏はボルドーでワイン造りの経験があり、娘のブリジット氏はモンペリエで醸造学を学んでいることから、心強いメンバーが協力し合い葡萄栽培からワイン造りまで伝統を守り続けています。
ワイナリーの農園の合計面積は70ha。そのうちの18haで葡萄が栽培され、それ以外の広大な土地ではコルシカ名産のブロッチュ(羊乳チーズ)を生産するための羊120頭が放牧されています。また、その羊たちは冬から春の間、葡萄畑の雑草も食べてくれるという葡萄栽培にも大切な存在です。葡萄畑では、白ワイン用のヴェルメンティーノや、黒葡萄のスキアカレッロ(シャカレロ)やニエルチオ、サンソーが栽培されています。
コルシカ北部の産地パトリモニオの石灰質土壌に対し、ドメーヌ・マルティニがあるコルシカ南西部アジャクシオは花崗岩質土壌です。葡萄畑があるのは、標高150~200m付近で、シリスや石灰が混ざった花崗岩質となっています。西向きでたいへん日当たりがよい斜面にあり、日中の気温も上がり雨も少なく乾燥した環境ですが、無灌漑で自然を生かした栽培を実践しています。
葡萄の収穫は丁寧に手摘みで行われており、発酵には野生酵母を使用。補糖や補酸は行いません。赤ワインの発酵にはこだわりがあり、スキアカレッロ50~60%とニエルチオ30~40%をコンクリートタンクを使用して混醸。アルコール度数の調整には、サンソーを加えることでアルコール度数の上がり過ぎを防ぎます。ヴィンテージによって、ヴェルメンティーノを加える場合もあります。品種を分けて醸しアッサンブラージュしたこともありますが、混醸の生み出す魅力にこだわり続けています。熟成もコンクリートタンクを使用し、少なくとも7年は熟成されたのちに出荷。まさにベストな飲み頃となったマルティニの赤ワインは、コルシカでは他に類をみないもので、フランス国内でもその品質は高い評価を得ています。多くのレストランではもちろんのこと、南フランス・グラースの高級プチホテルであるバスティード・サンタントワーヌや、パリのフォーシーズンズホテル ジョルジュサンクにあるミシュラン三ツ星レストラン「ル サンク」でもオンリストされているほどです。